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カフェにて - 03:本にまつわる
駅と大学を繋ぐ道から、一本外れた通りに面しているこのカフェで、私は店主としてコーヒーを淹れております。講義の合間や帰り道に立ち寄る学生さんが多いようで、有難いことに、ご用意した座席が学生さんで賑わう日々を過ごさせていただいております。大学の講義に合わせ、店休日は毎週日曜日、営業時間は朝早めの時間から夜遅くならない時間まで。大型チェーン店のようなお値段にはできませんが、その分、学生さんが長く在席されることは厭いません。美味しいコーヒーとちょっとした甘味を片手に、勉強をする人、本を読む人、楽しくお話する人、そんな学生さんを見ているのは楽しいものです。
そして、お客様の中には、店主である私にも気さくに話し掛けてくださったり、旅行のお土産をくださったり、何年も店を開いていると、それはもう様々なお客様がいらっしゃいます。平生であればお客様の会話には聞き耳を立てておりませんが、そんな中でどうしても、この話題は印象に残ってしまったのです。
「名言集とか面白いけど、文化が違いすぎてミリも同意できん時ない?」
週に一回程の頻度でご来店くださる、女性三人組のお客様たちです。たまに私にも話し掛けてくださる方たちではありますが、口調からすると私に向けられた話題ではありませんので、勝手には聞くまいと食器磨きに勤しんでおります。それでも私の好奇心は隠せず、彼女たちの会話が耳に入ってしまいました。
「心に沁みる名言を一つ以上選び、自身の意見を述べなさい」
「それー。本探そうと思って図書館行ったら、全部貸出し中だったわ」
「みんな、考えること一緒」
どうやら、講義の課題に挙がったようです。昨今、インターネットで調べれば何でも出てくる時代ではございますが、図書館に足を運ぶという学生の営みは変わらないようで、私としても微笑ましく見守りたいところです。
「んで、ちょっとググってみたんだけど...これとか」
名言を取り上げたページを開きながらでしょうか、スマホの画面をスクロールしながら、彼女は目についた名言を読み上げました。
「書物なき部屋は魂なき肉体のごとし。キケロ」
本棚に並んだ背表紙を眺めるだけで、充足感がございますよね。凝った装丁のハードカバーなど、少々お値段は張りますが購入してしまうものです。文庫化されて、同じサイズの本が行儀よく整頓されるのもまた一興です。
「...本、好きすぎでは?」
いつの時代も、本好きとは似たものです。しかし、書籍も売上が低迷していると聞きますし、最近の方は本を読まなくなっているのでしょうか。
「電子書籍とか聞いたら、キケロくん卒倒するかな」
ああ、なるほど電子書籍ですか。便利になりましたよね。
「キケロくんって、友だちみたいに言うじゃん」
「いや、他に何て呼べばいいの」
確かに、過去の偉人などに敬称を付ける機会は少ないですね。歴史上の人物も、敬称を付けずに暗記することがほとんどでしょうし。ふと疑問に思ったのですが、日本語の敬称はどうやって成り立ったのでしょうか。今度調べてみましょう。
「私たちは『あれは読んだよ』というために読むのである。ラム」
知識としての書物ということか、話題のための書物ということでしょうか。時代によっては、書物自体が豊かな生活の指標にもなったのでしょう。
「これは解る気ぃするー」
「マンガとかそうじゃない?流行ってるから読む、みたいな」
なるほど、現代日本においては話題のためですね。共通の話題を増やすために、流行を追うようなものでしょうか。情報過多な現代では話題になれば見つけやすいという利点もございますが、話題にならず埋もれてしまうものも多いところが難点です。
「でもさー、流行ってるから読まないって逆張りしたくなる時ない?」
「読んでないって言うために読まない」
読んでいないと言うために読まない、なるほど。それも話題を増やす手段の一つなのでしょう。全ての情報を全ての人が知っているわけではない、という状況が話題の一つになりますからね。勉強になります。
そうして笑いながら、彼女は一つの名言で指を止めました。
「暗記することは真に知ることではないのです。それだけなら、記憶の中に託されたものを後生大事に守っているだけなのです。モンテーニュ」
「耳が痛い」
「え、同意しかないんだけど?」
耳が痛いですね。私も同意いたします。
「何かさー、結局いつの時代も似たこと言ってんね?」
「課題に合った名言、探せばありそう」
そう、いつの時代も、人の営みというものはそうそう変わらないものです。
本日も皆さまの課題が無事に完遂されるよう、見守らせていただきます。
20241206
blue
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