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カフェにて - 01:カミサマの話
駅と大学を繋ぐ道から、一本外れた通りに面しているこのカフェで、私は店主としてコーヒーを淹れております。講義の合間や帰り道に立ち寄る学生さんが多いようで、有難いことに、ご用意した座席が学生さんで賑わう日々を過ごさせていただいております。大学の講義に合わせ、店休日は毎週日曜日、営業時間は朝早めの時間から夜遅くならない時間まで。大型チェーン店のようなお値段にはできませんが、その分、学生さんが長く在席されることは厭いません。美味しいコーヒーとちょっとした甘味を片手に、勉強をする人、本を読む人、楽しくお話する人、そんな学生さんを見ているのは楽しいものです。
そして、お客様の中には、店主である私にも気さくに話し掛けてくださったり、旅行のお土産をくださったり、何年も店を開いていると、それはもう様々なお客様がいらっしゃいます。平生であればお客様の会話には聞き耳を立てておりませんが、そんな中でどうしても、この話題は印象に残ってしまったのです。
「この世界に神様が居たらさー、何祈る?」
週に一回程の頻度でご来店くださる、女性三人組のお客様たちです。たまに私にも話し掛けてくださる方たちではありますが、口調からすると私に向けられた話題ではありませんので、勝手には聞くまいと食器磨きに勤しんでおります。それでも私の好奇心は隠せず、彼女たちの会話が耳に入ってしまいました。
「何それ、新手の宗教勧誘?」
「そういうのはお断りー」
学生さん同士の交流は喜ばしいことですが、さすがにそういった類のお話は、当店としましてもお断りしなければなりません。
「そういうんじゃなくて、さっき哲学の講義でさー」
ああ、なるほど。哲学の勉強には、宗教は付き物ですからね。無宗教と言われるこの国で、学問として興味を抱くことはとても大切だと思います。
「ってか、そもそも神様って何?概念?」
お客様、それは世界各所の宗教を敵に回す可能性がございます。
「え、待って、ググる」
今は何でも調べられる時代ですものね。とは言え、面倒になって調べない方も少なくないでしょうから、きちんと調べようという思いとその行動力は、賞賛に値するものかと思います。
「Wiki見たら、めちゃくちゃ長文なんですけど。熱量やばー」
「 "宗教信仰の対象として、尊崇、畏怖されるもの" だって」
「そんすう、いふ...ああ、尊崇、畏怖」
スマートフォンの画面を見せたり、ご自分でも調べたりしながら、お三方の会話は続いていきます。
「そんすう読めるの、賢すぎるでしょ」
常用される単語ではありませんので、音声だけでは伝わりにくいですよね。むしろ、私も調べたいくらいです。年々、読めるけれど書けない漢字が増えているように思えます。
「尊いとか、崇めるとか、めちゃくちゃ宗教っぽい」
「っぽいー」
(神を語るうえで、宗教のお話は避けて通れないのでは?)
...なんてツッコミは野暮ですよね。うっかり笑ってしまいそうになりましたが、私は食器を磨いている置物のようなものですので、どうぞ続けてください。
「で、結局何なの?概念?」
「それ二回目だしー」
「え、でも概念っぽくない?」
各々がご自分のスマートフォンを操作している間、度々会話が途切れては、思い思いに意見を交わされているようです。皆さま、勉強熱心でいらっしゃいますね。
「宗教とか信仰とかあるけどさ、そもそも信仰ってよく解んないよね」
「信じたり、崇めたり、祈ったり?」
「心の支えにする人も居るし、生活を律する宗教もあるよね?」
あー、と頷き合うように相槌を打って、お三方は再び手元に視線を落としたようです。私は磨き終えた食器を、大きな音を立てぬよう細心の注意を払いながら棚に片づけております。
「...私、解っちゃったかもしれない」
恐る恐るといった様子で、一人が静かな声を上げました。ここまで来ると、彼女たちの叩き出す結論が楽しみというものです。
「尊くて、崇めて、たまに怖くて、...これ好きな人のことじゃん?」
「え、待って、恋ってこと?」
「かしこー。ほんとだ、恋じゃん」
もう、私も、自分が飲む用のコーヒーでも淹れて参加してよろしいでしょうか。
「で、何だっけ?神様が居たら何を祈るかって話?」
そうそう、お話の切っ掛けはそこでしたね。
「じゃあ、私のこと好きになってくれって祈れば良いのでは?」
「それだわー」
それも、ある種の信仰なのでしょうか。
若い方たちの柔軟な発想は、真理を捉えているかのようにも思えました。
20241118
blue
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