春がやんでも
例えばそれが、この季節だけの付き合いだとしても、
春が終われば、全ては無に帰すとしても、
「変わらないよ」
自信ありげに呟いた俺を、彼女はちらりと見遣る。
綺麗ごとを言うなと、目線で叱咤しながら。
「春が已んでも?」
ため息混じりに、呆れたと言わんばかりの声。
それでも、話に耳を傾けるような姿勢で、彼女は俺の方を向いた。
"已む" という単語をその字で表すことは、 "すっかり終える" という意味になると知ったのは、つい最近のこと。彼女の言葉には、様々な意が含まれていることが多い。
「そう、やんでも」
俺も同じ言葉で、同じように返してみるけれど、考えてしまう。
彼女の言う言葉は、俺が発する言葉とは意味が違う。
もっと深く、
俺なんかにはよく解らない、
色んな感情が巻き込まれた言葉たち。
その様々な感情全ては、俺には到底理解できることは無いだろうけれど。
でも、きっと、全てが已んでも消えない。
春風が止んで、
心を病んで、
全てが已んでも。
そう、君は居なくならない。
俺が勝手に、そう信じたいだけだとしても。
051224
blue
Theme by 『7』
PR